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[>Dear.椿姫さん

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リクエスト小説
 


 
 なんてハードな練習なんだ……。
 
 
 
「ごめん、ちょっと休憩……」
 私はコート脇のベンチに座った。
 
 
 
 何故か分からないけど
 私は中学生の部活に付き合っていた。
 部長の子が
 
「フォームがきっちりしていますね」
 
 なんて急に話しかけてきて、少し話してて
 気がついたら一緒にすることになっていた。
 
 テニス自体はよくする。
 弟たちが部活でやってて
 私にも教えてくれた。
 
 だけど、正直こんな長時間、しかも激しい運動は……
 少し体力が足りなかったな……。
 
 
「大丈夫ッスかー?」
 この中で唯一の2年生の子が駆け寄ってきた。
 確か……切原くんだっけ?
 初めの自己紹介でそう言ってたっけ。
「幸村部長、スパルタッスからね! ここまで付いてきただけでも、俺、あんたのことスゲェって思いましたよ!」
 
 幸村部長と言って指差したのは
 始めに声をかけてきた青い髪の子だった。
 
「えっと……切原くん……?」
「そうッスよ」
「切原くんも今、休憩?」
 
 さっき、赤い髪の子が怒られてるのを見た。
 まだお前は休憩に入っていないと。
 しかし彼はけろっとした顔で、首を横に振った。
「いや、何も言われてないッス」
 
 ……良いのだろうか。
 思った時、幸村くんの怒声が響いた。
 
「赤也! 何油売ってるんだ! そんなに暇なら相手してやる! 今すぐにコートに入るんだ!!」
「げっ! バレた」
 
 切原くんはやばいという顔をしたけど
 その後、何故か嬉しそうな顔をしていた。
「えと……怒られてるよ?」
「え? あぁ。でも、部長と打ち合えるなんて、ラッキーッスよ」
 
 私は改めて感心した。
 ここにいる人たちはテニスが好きなんだろうか。
 こんなきつい練習に耐えられるのもそのせいなのだろうか?
 
 
 
 
 
 練習が終わった直後はみんな疲れ切っていたのに
 何故か帰る頃にはもう元気で
 みんな集まって騒いでいた。
 
 私はそれを遠くから見ていた。
 何だか彼らを見ていると、弟たちの小さい頃を思い出した。
 ふと、幸村くんがこっちに駆けてきた。
 
「どうしたの?」
「良かったら、駅まで一緒に行きませんか?」
 私は微笑んで返した。
 
「にしても、本当にテニス部じゃないんか?」
「えぇ」
「なかなかの腕でしたよ? フォームもきっちりしていました」
「弟たちがテニス部で、よく教えてくれるの」
「“たち”って事は……」
「2人いるわ」
「あ、俺も2人の弟いるんですよ」
「あら、そうなの」
 
 他愛もない会話をしながら
 そんなに距離のない駅までの道を進んだ。
 誘ってきた張本人の幸村くんは
 何故かあまり会話に参加してこなかった。
 様子を見ていると真田くんに話しかけたりしていたが
 ほとんど黙って前を見ていた。
 
 なぜだろうか。
 
 彼に話そうって気は、私にもなかった。
 でも、さっきから気になって仕方がない。
 彼のことばかりみている気がするのに……
 真剣そうな彼の顔つきが、そうさせるのだろうか。
 
 改札を始めに真田くんが通った。
 それにみんなが続こうとした。
 
「それじゃ、俺は少し寄り道して帰るからここで」
 急に幸村くんはせっかく改札まで来たのに
 どこかへと引き返してしまった。
 
「珍しいものだな」
「あぁ。さっきも何か様子がおかしかった」
 
 柳くんと真田くんのやりとりを聞いて
 私は思いきって彼を追いかけることにした。
「今日はありがとう。楽しかったわ。私も買うものがあったから、ここでさよならね」
 
 
 礼儀正しく別れのあいさつをする彼らを背に
 私は彼らに疑われないように
 だけど、少し早足で
 幸村くんを追った。
 
 
 
 
(前半終了)
 

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